「また転職で失敗したらどうしよう」
求人票を前に、そんな不安が頭をよぎったことはありませんか。
条件は悪くなさそうに見える。
年収も、仕事内容も、休日も一応は整っている。
それでも、なぜか胸の奥に引っかかる違和感が消えない。
僕はこれまで、
ブラック企業・年功序列企業・成果主義企業を実際に経験し、
転職エージェント経由・直接応募・リファラル採用まで、
あらゆる転職ルートを通ってきました。
その中で、2度「入社してから後悔する転職」もしています。
毎月終電、評価は不透明、なぜか人が次々と消えていく職場。
当時の僕は、「見る目がなかった」と自分を責めました。
でも今なら、はっきり言えます。
失敗の原因は、判断力不足ではありません。
ただ一つ、求人票の“読み方”を知らなかっただけです。
採用側として面接官を経験し、
数百件以上の求人票と向き合う中で分かったことがあります。
ブラック企業の兆候は、入社後に突然現れるものではない。
応募前――つまり「求人票の時点」で、必ず痕跡を残しています。
その違和感は、あなたが弱いからじゃない。
まだ「構造として求人票を読む視点」を知らないだけです。
この記事では、感情論や根性論は一切使いません。
法律上のルール、求人票の構造、そして現場で見てきた実例をもとに、
ブラック企業を「運」ではなく「再現性」をもって避ける方法を、
一つずつ、言語化していきます。
ブラック企業の見分け方は、なぜ求人票でわかるのか

転職相談をしていると、かなりの確率で、同じ質問を受けます。
「求人票って、正直どこまで信じていいんですか?」
「どうせ、良いことしか書いてないですよね?」
この疑問を持つ人ほど、実は真面目で、慎重です。
そして僕は、まさにその慎重さを持ちながら、転職に失敗した側の人間です。
20代の頃、僕が信じた求人票にも、
「残業少なめ」「成長できる環境」「裁量あり」
そんな、耳触りのいい言葉が並んでいました。
でも、入社して数ヶ月で現実を知ります。
終電が当たり前。
評価基準は曖昧で、上司の気分次第。
気づけば、半年で同じチームの3人が辞めていました。
そのとき僕は、「見る目がなかった」と自分を責めました。
でも、転職を重ね、採用する側として求人票を作る立場も経験して、考えが変わった。
失敗の原因は、判断力の欠如じゃない。
求人票の“読み方”を、誰からも教わっていなかっただけだったんです。
求人票は、単なる「広告」ではありません。
企業が好き勝手に理想像を書き連ねるチラシでもない。
本来、求人票は労働条件を明示するための公式文書です。
賃金、労働時間、休日、業務内容、勤務地。
これらはすべて、法律上も「ごまかしてはいけない情報」として扱われています。
だから、ブラック企業は露骨な嘘を書きません。
代わりに、僕が何度も引っかかり、
相談者が繰り返し踏み抜いているのが、次のやり方です。
- あえて数字を書かない
- 条件にやたらと幅を持たせる
- 不利な項目だけ、言葉を濁す
当時の僕は、これを「まあ、どの会社もこんなものか」と流しました。
でも今なら分かります。
この“曖昧さの積み重ね”こそが、最大の危険信号です。
採用側として求人票を作る立場になったとき、
僕ははっきり理解しました。
誠実な会社ほど、書くと不利になる情報も、具体的に書きます。
逆に、構造的に問題を抱えている会社ほど、
求人票が不自然に「ぼんやり」していく。
構造的に歪んだ求人票は、例外なく、職場環境も歪んでいます。
これは感覚論ではありません。
僕自身が失敗し、現場で何度も確認してきた、再現性のある事実です。
それでも迷ったときの「正しい行動」

ここまで読んでも、
「理屈は分かった。でも、まだ決めきれない」
そう感じている人も、きっと多いと思います。
それは、優柔不断だからでも、覚悟が足りないからでもありません。
自分の人生を、軽く扱いたくないだけです。
僕自身、転職のたびに迷いました。
内定通知を前に、夜中まで求人票と面接メモを見返して、
「ここで決めて、本当に大丈夫か?」と何度も自問しました。
そして正直に言うと、
うまくいかなかった転職には、はっきりした共通点があります。
それは、聞くべきことを、聞かずに決めてしまったこと。
当時の僕は、
「空気を悪くしたくない」
「今さら聞いたら、評価が下がるかもしれない」
そんな理由で、大事な質問を飲み込みました。
結果、入社後に知ることになるんです。
「それ、面接で聞いておけばよかったな」と。
だからこそ、今ははっきり言えます。
迷ったときにやるべきことは、気合でも覚悟でもありません。
事実を取りに行く質問を、ちゃんとすることです。
エージェントに必ず聞くべき質問

転職エージェントは、使い方次第で強力な味方になります。
ただ、これは身をもって学びましたが、何も聞かなければ、都合のいい情報しか出てきません。
僕自身、最初の転職では、
「条件は悪くないですよ」「皆さん問題なく働いてます」
そんな言葉を鵜呑みにして、深掘りしませんでした。
でも後から分かります。
聞かなかったから、教えられなかっただけだったと。
だから、キャリア相談では必ずこの3つを勧めています。
- 直近1年の離職率(できれば部門別)
- 実際の平均残業時間(繁忙期の最大値も含めて)
- 配属変更・転勤の実例(過去にどれくらい起きているか)
この質問をしたときの反応は、驚くほど正直です。
本当に情報を把握している担当者は、数字と事実で答えます。
逆に、話を濁したり、抽象論に逃げる場合は、
「その会社の弱点」に触れている可能性が高い。
面接で聞いていい質問

面接というと、どうしても
「評価される場」「減点されないようにする場」
そう思ってしまいますよね。
僕もそうでした。
実際、1社目の面接では、用意していた質問を全部飲み込みました。
理由は単純です。
嫌われたくなかったから。
でも、入社してから気づきます。
聞けなかったことほど、後から一番困る、と。
だから今は、迷っている人にはこう伝えています。
面接は、企業を見極める最後のチャンスでもあると。
- 評価制度の基準(何を達成すれば昇給・昇格するのか)
- 忙しい時期と、その理由(いつ・なぜ忙しく、どう乗り切っているのか)
この質問に対して、
・言葉が急に曖昧になる
・「やる気」「根性」といった精神論で返される
・質問そのものを嫌がられる
そうした反応が出た会社は、
入社後も、都合の悪い説明はしてくれません。
これは僕の実体験です。
聞いて嫌な顔をされた会社ほど、
入社後、こちらが困ったときにもっと嫌な顔をされました。
よくある質問(Q&A)

Q:求人票に嘘が書いてあったら、違法になるの?
これ、友だちから一番よく聞かれる質問です。
結論から言うと、
ガチの嘘なら違法になる可能性はある。
でも、現実はそんなに単純じゃない。
求人票って、法律上は「労働条件を明示する文書」だから、
本当は虚偽や誇大表現はダメなんです。
ただね、僕が20代で引っかかったのは、
露骨な嘘じゃなくて、限りなく黒に近いグレーでした。
「残業少なめ」「裁量あり」
この言葉を信じて入社したら、
・繁忙期は月80時間残業
・裁量あり=全部丸投げ
で、あとから言われたんです。
「嘘じゃないですよね?」って。
その瞬間、何も言い返せなかった自分の情けなさ、
今でもはっきり覚えてます。
だから、ここで大事なのは、
「違法だったらどうしよう」と期待することじゃない。
そうなり得る構造が、求人票に出てないかを見ることです。
Q:未経験歓迎って、やっぱりブラック多い?
これもよく聞かれるけど、
未経験歓迎=ブラックではありません。
実際、未経験からちゃんと育てて、
人が定着してる会社も、普通にあります。
ただ、相談で圧倒的に多いのは、こんな話。
「チャンスだと思って入ったのに、誰も教えてくれなかった」
僕も似たような経験あります。
「最初は見て覚えて」って言われて、
気づいたら放置されてた。
特に注意してほしいのは、次が全部そろってる求人。
- 未経験歓迎なのに、年収だけやたら高い
- 研修や教育の話がふわっとしてる
- 仕事内容が抽象的すぎて、1日が想像できない
本気で育てる会社は、
「何を・どれくらいの期間で・誰が・どう教えるか」まで書きます。
それが書けない会社は、
正直、育てる前提じゃない可能性が高いです。
Q:固定残業代がある会社って、やめたほうがいい?
これも極端に考えがちだけど、
固定残業代=即アウトじゃない。
実は僕、固定残業代ありの会社で、
わりと健全に働けた経験もあります。
問題は制度そのものじゃなくて、
中身と、説明のされ方。
- 何時間分の残業なのか
- 超えたらどうなるのか
- 「残業ほぼなし」と矛盾してないか
一番危ないのは、
聞いても誰もちゃんと答えられない会社。
仕組みを説明できないところは、
入ってからも、都合の悪いことは説明しません。
Q:面接で条件の質問したら、印象悪くならない?
これ、めちゃくちゃ分かります。
正直に言うね。
印象が悪くなる会社、あります。
でも、それってつまり、
聞かれると困る前提で採用してる会社なんです。
僕も、質問した瞬間に、
面接官の表情がスッと変わったことがありました。
その会社、結局行きませんでした。
今でも「あれは正解だった」と思ってます。
ちゃんとしてる会社ほど、
条件の質問を対話として受け止めます。
入社してから苦しむより、
面接で一瞬気まずくなるほうが、100倍マシです。
Q:エージェントの言うことって、どこまで信じていい?
これも友だちによく言います。
話半分。必ず裏取り。
エージェントも人だし、
ボランティアじゃない。
僕自身、
「大丈夫ですよ」って言葉を信じて入社して、
あとから「それ最初に言ってほしかった…」って思ったことがあります。
だからこそ、この記事で何度も書いてきたけど、
数字・事実・実例を必ず聞いてください。
そこにちゃんと答えられるかどうか。
それが、そのエージェントを信用していいかの分かれ目です。
Q:ここまで疑ったら、どの会社にも行けなくならない?
これ、めちゃくちゃ誠実な不安。
でも実際は、逆です。
ちゃんと見れるようになると、
迷いが一気に減ります。
僕も昔は、内定出ても決めきれなくて、
何社も比べて、最後は疲れ切ってました。
でも判断軸を持ってからは、
「ここは違う」「ここはいける」が、かなり早く分かるようになった。
疑うために読むんじゃない。
納得して選ぶために読むんです。
Q:それでも不安が消えないときは、どうしたらいい?
不安が消えないのは、
あなたが弱いからじゃない。
人生の分かれ道に立ってるだけです。
そんなとき、僕が友だちによく言うのは、これだけ。
「この会社に3年いる自分、想像できる?」
キラキラしてなくていい。
不安がゼロじゃなくてもいい。
それでも納得して進めるか。
判断基準は、それで十分です。
転職は、勢いで決めるものじゃない。
でも、怖がり続けるものでもない。
ちゃんと見て、ちゃんと選べば、大丈夫。
転職で人生を削らないために

転職は、逃げじゃありません。
「もう一度、自分の人生を取り戻すための行動」です。
ブラック企業は、突然牙をむきません。
求人票、エージェントの反応、面接での受け答え。
すべてに、小さな違和感としてサインが出ています。
僕自身、そのサインを読めるようになってから、
職場の選び方も、働き方も、年収も、大きく変わりました。
あの頃、毎晩「このままでいいのか」と思いながら帰っていた自分に、
今ならこう言えます。
ちゃんと見れば、ちゃんと選べる。
大丈夫です。
見抜けるようになれば、次の職場は「運」じゃない。
あなた自身が選び取った「選択」になります。
情報ソース・注意書き
本記事は、求人広告表示や労働条件明示に関する公的資料(厚生労働省等)を参考に、一般的な観点から執筆しています。
- 厚生労働省|労働者の募集広告の表示について(周知)
- 厚生労働省(PDF)|募集時などに明示すべき労働条件が追加(2024年4月施行)
- 厚生労働省(PDF)|職業安定法に基づく指針等
- 労働局(ハローワーク)|求人票に明示する労働条件が新たに追加
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件の適法性や雇用条件の最終判断を保証するものではありません。応募・入社判断はご自身の責任で行い、必要に応じて公的機関や専門家へ相談してください。
